脊髄性筋萎縮症の症状

脊髄性筋萎縮症(SMA)の症状は、進行する筋力の低下、筋肉の萎縮などです。一般に、筋力低下は左右で同じようにおこります。
SMAに現れる症状はひとりひとり異なっており、症状が始まる年齢と運動機能に基づいて病気のタイプを分類します。各タイプ内での重症度もさまざまであり、25%程度の人は正確なタイプを特定できていません。

SMAのタイプ

生後0~6ヶ月

年齢相当の運動発達レベル
座れない(“nonsitters”)

タイプ
Ⅰ型(別名:Werdnig-Hoffmann病)

  • 首がすわりにくい
  • 咳が弱い
  • 泣き声が弱い
  • 食べものを噛んだり飲みこんだりする筋肉の力が弱くなってくる
  • 筋力が弱くなってくる
  • 横になっているときに「カエルの足」のような姿勢をとる
  • 身体の両側に、重い筋力低下がある
  • 呼吸に用いる筋肉(肋間筋)の力が弱くなってくる(シーソー呼吸など)

生後7~18ヶ月

年齢相当の運動発達レベル
自力で座れる(“sitters”)

タイプ
Ⅱ型(別名:Dubowitz病)

  • 筋力低下
  • まれに飲み込みや咳、呼吸に障害がおこることがある
  • 筋肉痛や関節のこわばりがおこる
  • 脊柱側彎症(背骨の弯曲)などがおこり、装具や手術が必要となる場合が多い

生後18ヶ月以降

年齢相当の運動発達レベル
自分で歩ける
(“walkers” しかし、歩けなくなっていくこともある)

タイプ
Ⅲ型(Kugelberg-Welander病)

  • 脊柱側彎症(背骨の弯曲)
  • 飲み込みが難しくなる
  • 一般に、腕よりも脚の筋肉の方が、影響をうける
  • 筋肉痛
  • 関節が硬く動きにくくなる、一部の関節を使い過ぎる

青年期後期/成人期

年齢相当の運動発達レベル
運動発達は正常範囲

タイプ
Ⅳ型

  • 症状は、若年発症型SMAと似ている。10代後半から成人期に、筋力低下やふるえ、筋肉のひきつりや痛みが徐々にあらわれはじめる。

SMAに似た他の病気の例:

  • Spinal muscular atrophy with respiratory distress (SMARD)
    SMARDの症状は、乳児期発症型のSMAに似ていますが、脊髄の下位運動ニューロンではなく上位運動ニューロンに影響します。SMARDのある子どもは一般に低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)であり、生後3~6ヶ月に横隔膜の麻痺のために重い呼吸困難などがおこります。
  • 遠位遺伝性運動ニューロパチー(V型SMAと呼ばれることもある)
    遠位遺伝性運動ニューロパチーは非常にまれな常染色体優性遺伝性疾患(じょうせんしょくたいゆうせいいでんせいしっかん)であり、変化した遺伝子を1コピー受け継ぐだけで発症するものです。脊髄内の神経細胞に影響がおこり、筋力の低下や萎縮が、最初に腕や脚の筋肉に現れ、その後、他の筋肉にも拡がっていきます。
  • ケネディー病(KD)
    運動神経細胞に影響がおこるSMAとは異なり、運動神経細胞と感覚神経細胞の両方に影響がおこります。男性にのみ発症します。X染色体の疾患で、男性4万人あたり約1人におこります。

はじめにSMAが疑われるのは、多くの場合、親が、子どもの年齢に対する運動発達の遅れに気づいたときです。

<参考>こんなことで困っている方はいませんか?Ⅲ型SMA患者さんでみられることのある症状のご紹介
監修:兵庫医科大学小児科学講座 主任教授 竹島 泰弘 先生

子どもの運動発達に関する親からの報告は、信頼性の高い情報です。運動発達の遅れについて小児科を受診・相談することはこの病気の診断、適切なケア戦略を決めるために有用です。

子どもが年齢相応の標準的な運動発達レベル(自力での頭の姿勢を支える、寝返り、上体起こしなど)に達していないことに、親が気づく場合があります。飲み込んだり食べたりすることが難しくなることや、むせたり食べ物を肺に吸い込んだり(誤嚥(ごえん))することなく飲み込むことができなくなることもあります。

すべての子どもはそれぞれのペースで成長しますが、世界保健機関(WHO)はMulticentre Growth Reference Study(MGRS)の一環として、一般的な運動発達レベルのガイドラインを発表しています。

多くの時間を子どもと過ごす小中高等学校の先生が学校生活や体育の授業で運動発達の遅れに気づいたら。

<参考>このような児童・生徒はいませんか?ぜひ! 先生にも知っておいてほしい! Ⅲ型脊髄性筋萎縮症(SMA)という病気
監修:小牧 宏文 先生 国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター長

MGRSにおける運動発達レベル
 

粗大運動発達マイルストーン 達成基準
支えなしで座る 10秒以上頭部をまっすぐにして座れる。身体のバランスまたは姿勢の維持のために腕または手を使わない。
手と膝を使った四つ這い動作 手または膝をついて前後に動く。腹部が床に触れない。3歩以上連続して動く。
立つ(介助あり) 家具などの安定したものに捕まって両足でまっすぐに立つ。10秒以上立ち続ける。
歩く(介助あり) 背中をまっすぐにして直立する。片手または両手で安定したものにつかまって、横または前に歩く。片脚を前方に動かしながら、もう片方の脚で体重を支える。5歩以上歩く。
立つ(自力) 背中をまっすぐにして両足(足指ではない)で直立する。ものにつかまらずに、脚だけで体重の100%を10秒以上支える。
歩く(自力) 背中をまっすぐにして5歩以上自力で歩く。片脚を動かしながら、もう片方の脚で体重を支える。人やものにつかまらない。

出典:WHO Multicentre Growth Reference Study

子どもの年齢 標準的な運動発達レベル
生後2ヶ月
  • 頭を上げることができ、うつ伏せの状態で頭を上げ始める。
  • 腕および脚の動きがスムーズになる
生後4ヶ月
  • 支えなしで頭の姿勢を安定して維持する。
  • 足を硬い表面につけた状態で脚を曲げる。
  • うつ伏せから仰向けに寝がえりをうつ。
  • おもちゃを持つ、ぶら下がっているおもちゃを揺らす。
  • 手を口に当てる。
  • うつぶせで、肘立ちする。
生後6ヶ月
  • 両方向(仰向けからうつ伏せ、うつ伏せから仰向け)に転がる。
  • 支えなしで座り始める。
  • 立った状態で、脚で体重を支え、跳ねることもある。
  • 身体を前後に揺り動かし、ときには前に動く前に、後ろに四つ這いする。
生後9ヶ月
  • つかまり立ち。
  • 座れる。
  • 支えなしで座れる。
  • 何かにつかまって立ち上がる。
  • 四つ這い。
1歳
  • 介助なしで座る。
  • 何かにつかまって立ち、家具につかまって歩く(伝い歩き)。
  • 何にもつかまらずに、数歩歩く。
  • 自力で立つ。

出典:疾病管理予防センター(CDC)マイルストーンチェックリスト