脊髄性筋萎縮症(SMA)の在宅ケア

SMAのある人とそのご家族は、一連の複雑な医療機器を使いこなすことから、家庭用品をカスタマイズすることまで、SMAのある生活に適応するためにあらゆることを行っています。
SMAのある人や介護の方の実際の経験から生まれた、実践的な在宅ケアの方法や家庭生活でのヒントをご紹介します。
※これらの情報は、個人の意見および経験に基づいています。医療関係者からの医学的なアドバイスではありません。

日々の生活での工夫

「手を伸ばして、つかみ、移動させること。これが、娘が自分の力で生きていく日を目標として、私たちが毎日行っているささいな動作です。テーブルの上の自分のボウルを自分で片付けることは、娘にとっては大変なことですが、持ち上げること、つかむこと、そして運ぶこと、それらの動作すべてが治療なのです。」

「手芸用品店で買ったマットレスで、車椅子のシートの奥行きや高さを調節しています。息子が『成長して』ぴったりになるような少し大きめの車椅子を買ったからです。息子がもっと動き回れるように、車椅子の背もたれの部分にマットレスを入れています。」

「私たちは新しい『ふつうの生活』をみつけ、暮らしています。娘には、娘が他の人と違っているとは教えません。私たち一人ひとりが違う人間であるように、娘も個性をもつ一人の人間だからです。私たち皆がやっていることを娘もやるでしょう。テーブルで絵を描いたり塗り絵をしたりするとき、私たちはテープで紙を固定し、娘が描きやすくなるようにします。」

「地元の補装具貸出施設には宝物がたくさん隠されています!貸出料金はほぼ無料で、必要とする器具(車椅子、障がい者用便座、障がい者用ブランコ等)がたくさんそろっていることが多いのです。」

「クレヨンと鉛筆なら問題はないのですが、マジックは、娘にはキャップを取ることが難しいときがあります。そのため私は、キャップを簡単にはずせるマジックを見つけるまで、さまざまなメーカーのマジックを一つひとつチェックしました。」

「娘は、さまざまな飾りの付いた、ドリルで開けた穴のあるゴルフボールを30個持っています。特別な機会や、あるいはただ楽しむためだけに、車椅子のジョイスティックレバーに取り付けて飾り付けをするのです。」

自立を促す

「洗面所の低いところにカップと小さな洗面器を置いておきます。そこで娘は歯を磨くのです。こうすれば、娘は座って歯を磨くことができますし、親は洗面器を洗うだけですみます。こうすることで、私たちの腰の負担も少ないのです。なぜなら、娘をシンクのところまで抱き上げる必要がないからです。そして娘にとってもこのほうが安全です。」

「あまり高価でない座卓を買いました。それがあれば子どもたちは(椅子やソファから落ちることを恐れずに)床の上に簡単に座ることができ、硬い板の上で書いたり遊んだりすることができます。子どもたちが床に座って前方に脚をまっすぐ伸ばしているときに、膝関節固定用の装具をつけてあげれば、それが治療にもなります。」

「娘には、なるべく自分でさせるようにしています。ウォーターサーバー用のカップをいつもキッチンの冷蔵庫の扉の外に置いておきます。娘はのどが渇いたら、キッチンに行くだけで、戸棚に手を伸ばさなくても自分で水を飲むことができるのです。」

食べ物のヒント

「ホームメイドの棒付きアイスキャンディーはおいしくて、しかもヘルシーな材料で作ることができます。子どもたちは、好きなようにかじったり、しゃぶったりできます。イチゴ、皮をむいたオレンジのスライス、氷、水を混ぜて棒付きアイスキャンディーの型に入れます。簡単で、ヘルシーなおやつです!」

「スムージーは一番の味方です!スムージーに、サプリメントを含むあらゆる種類の栄養素を加えます。飲みやすく、栄養豊富になります。」

家の改修

「洗面所のシンクを交換し、娘が車椅子に乗ったまま使えるようにしました。水道の蛇口に長いアームを取り付け、娘の手が蛇口のすぐ下に届くようにしました。」

「リビングルームをほとんどいつも開け放したままにしています。子どもたちが、さまざまな車輪がついた装置に乗っていても活動的でいられるような家具を探しているのですが、まだ見つかっていません。これは部屋を違う目的で使うというシンプルな改修ですが、子どもたちが動き回れる広い空間ができます。」

「家の中のほとんどのカーペットを硬く滑らかなフローリングに張り替えています。そうすることで摩擦の問題がなくなり、子どもたちが簡単に家の中を動き回れます。さらに、汚れた車輪で家の中を動き回った後、床をきれいにすることも簡単になります!ラグマットとプレイマットを数枚敷いたので、床の上で遊ぶための柔らかい場所はまだあります。転倒して硬い床に頭を打ちつける心配はありません。」

SMA用機器

補助的な装置や機器は、最大限の自立と、ケアの最適化に役立ちます。以下の機器リストで、どのような機器が利用できそうかご参照ください。これはすべての機器リストではありません。必ずケアチームと話し合い、あなた個人のニーズに最適なものを選んでください。

障がい者用ベビーカー

障がい者用ベビーカーは車椅子に比べ、より軽く、より持ち運びしやすく、車に積み込むことも、運び出すことも容易です。快適な位置や姿勢を保つのに役立つ付属品を装備できます。障がい者用ベビーカーは、多くは、子どもが車椅子を使用できるぐらい大きくなるまで使用されます。

咳介助装置

咳介助装置は、息を吸うときに肺に空気を徐々に送り込み、息を吐くときに急速に逆流させることによって、より多くの喀痰を伴う咳を生じさせます。それにより、分泌物が押し出されるため、吸引器で喀痰を取り除きやすくなります。

パルスオキシメーター

パルスオキシメーターは、センサー付きの小さなクリップまたはテープを手の指か足の指に装着することによって、血液中の酸素の割合を測定します。SMAのある人で酸素レベルが下がり過ぎる場合、特に睡眠中は、追加の呼吸補助が必要かもしれません。

二相性陽圧換気(BiPAP)装置

BiPAP装置は、息を吸うときに大量の空気を肺に送り込み、自力で息を吸うときよりも大きく肺を膨らませます。息を吐くときにはその圧を下げ、より正常な呼吸パターンに近づけます。

車椅子

手動、電動ともにさまざまなタイプの車椅子があります。手動車椅子は、椅子に座ったまま、または介助者が押すことによって操作できます。電動車椅子は、通常はジョイスティックレバーで操作でき、他の人の助けがなくても、ご自身で移動が可能です。筋力や操作が問題なら、ジョイスティックレバーの位置を調節することもできます。

車用ベッド

車用ベッドを用いることで、車で移動する際、より快適に横たわることができます。特に、無呼吸または酸素飽和度低下のリスクがある重症型のSMAの子どもに対して、通常の車用シートよりも車用ベッドが推奨されます。

立位器具

一人で立つことができない場合は、立位器具が役立ちます。立位をとることで骨に体重がかかり、骨密度や筋力が改善する可能性があります。固定された立位器具と、移動できる立位器具(可動式立位器具)があります。